お知らせ
難治性うつ病に対する新たな磁気刺激治療(SNT)の有効性について
iTBS(間欠的シータバースト刺激)は、治療抵抗性のうつ病治療としてFDAに承認されています。
スタンフォード大学にて、
iTBSの加速プロトコルであるStanford Neuromodulation Therapy(SNT)
(以前はSAITNT; Stanford accelerated intelligent neuromodulation therapyと呼ばれていました)
が開発され、このプロコトールでは、5日間の治療後に約90%の寛解率が得られました。
(SAINTの非盲検試験についてはこちらから)
今回は、このSNTプロトコールの二重盲検無作為化比較試験の結果が2022年に発表されたので紹介します。
論文の趣旨
論文の種類 二重盲検無作為化比較試験(double-blind)
Patient 中等度から重度のうつ病エピソードを経験している治療抵抗性うつ病の参加者
Intervention SNT(Stanford Neuromodulation Therapy)を受けた(14名)
Comparison sham刺激のSNTを受けた(15名)
Ouctome 治療4週間後のMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)のスコア
SNT(Stanford Neuromodulation Therapy)プロコトールとは
通常のTMS治療スケジュールは4週間から6週間にかけて、20から30回のTMS治療を受けます。
このSNTではiTBS刺激を毎日10セッション、5日間連続で行いました。
1日10回を5日間連続で行うという、超短期集中治療(accelated iTBSプロトコール)となります。
治療部位のマッピング方法
SNTのTMSは、治療前に2つのMRIをうけ、TMSの治療部位であるDLPFC(dorsolateral prefrontal cortex:背外側前頭前野)を同定します。
脳の構造を測る通常のMRIと、脳の活動状態を見るfMRIをとり、
個人個人に合わせて、DLPFCを同定しました。
結果
SNT治療を行った4週後のMADRSスコアのベースラインからの平均減少率は
SNT治療群で52.5%、sham治療群で11.1%でありました。
治療抵抗性うつ病に対して、MRIによるターゲティングを用いた加速iTBSプロトコールであるSNTはsham刺激群より有用であるとわかりました。
コメント
スタンフォード大学で行われたSNTプロトコールはこれまでのTMSの治療期間を5日間に短縮したという画期的なプロトコールです。
一方で、SNTプロトコールでのDLPFCの同定についてはfMRIに依存しているため、実施ができる医療機関は限られるのではと考えます。
現在、TMS治療におけるDLPFCの同定にはAPB5cmとF3が使用されています。
研究において、F3法の方がMRIを使用してDLPFCの位置に近いことから
F3法を最近は治療場所の同定には、使用されています。
SNTプロコトールについては5週目以降の結果など、
さらなる追加研究が今後も期待されています。
参考文献
Stanford Neuromodulation Therapy (SNT): A Double-Blind Randomized Controlled Trial. Am J Psychiatry. 2022 Feb;179(2)