【医師解説】
PMS /PMDD専門外来
~月経前に決まって体調が悪い理由?治療はどうするの?~

PMS/PMDDとは

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は月経周期でのホルモンの変化により起こる体の症状、気持ちの症状を総称した名称です。症状としては月経が始まる2週間から1週間にかけて頭痛、腰痛、腹痛などの体の不調や疲労感、イライラ感、憂鬱感、焦燥感、集中力低下などの精神の不調が出現し、月経開始とともに症状は消えていきます。

日本では月経がある女性の約70−80%が月経前に何らかの症状があると言われています。

気持ちの症状が強い場合は月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Dysorder)と呼び、その頻度は約1.2%ぐらいと言われます。

その症状あなただけではありません
 5割の女性が女性特有の健康問題で困った経験があります

経済産業省から発表された調査資料「健康経営における女性の健康の取り組みについて」では女性の5割が女性特有の健康課題で勤務先で困った経験をしたことがあり、その中でPMSは43%を占めるという報告がありました。

PMS/PMDDの原因

バイエル薬品株式会社 小冊子「PMS 月経前症候群」より

 PMS、PMDDの発症には生理前に増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響が指摘されていますが、はっきりとした原因は解明されていません。もう一つの女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)とのバランス異常という説もあります。最近では感情にかかわる神経伝達物質(セロトニン)の量や働きにこれらの女性ホルモンが影響を及ぼして症状が現れるのではという説もあります。

 東洋医学では卵巣から分泌されるホルモンの変化と自分自身の体質・体調の変化が原因にあると考えます。生理前は子宮内膜や骨盤内の血液循環の変化で血の異常(瘀血や血虚)が生じ、さらに生理の2週前頃からの黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響により体内に水分貯留がおき、水滞(水毒)が加わります。また気の異常をともなうこともあり、これら「気・血・水」のバランスが崩れることで多彩な症状を呈するといわれています。

PMSを悪化する要因

ストレス

 月経前には感情を安定させる神経伝達物質(セロトニン)の分泌が女性ホルモンの影響により減少するため、イライラや落ち込みが出やすくなります。急な環境の変化や、職場の人間関係がうまくいっていない時などストレスが溜まっているときにはPMSの症状は強くなります。几帳面な方完璧主義な方にPMSが多いとも言われています。

煙草

 喫煙は血の巡りを悪くします。月経前は子宮内膜や骨盤内の血液の循環が変化し血の巡りが悪くなっています。全身にいきわたる血液が減少すると、体が冷えやすくなり、自律神経のバランスが悪くなり交感神経が優位になりPMSを悪化させる要因となります。

アルコール

 月経前には膵臓から分泌されるインスリン(血糖を下げるホルモン)の効果が低下し、血糖値が上がりやすくなります。インスリンの効果が弱まり、血糖値が上がると、膵臓は多量のインスリンを出そうとして結果的に低血糖になります。そのため、食事から2-3時間後に低血糖になりやすく、月経前に甘いものが食べたくなるなどの症状が出やすくなります。アルコールを飲酒するとアルコールの代謝のために肝臓が働きます、肝臓が働くためにはブドウ糖が必要であり、月経前に過度に飲酒をすると低血糖状態に拍車がかかり、PMS症状を悪化させます。

カフェイン

 カフェインの過剰摂取は交感神経を過緊張にして、イライラや緊張感を高める原因となります。また月経前は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で水分貯留作用があり頭痛が出やすくなります。カフェインは血管を収縮させる作用があるため、適量であれば片頭痛を和らげますが、過剰摂取すると頭痛の悪化をまねきます。

ベスリTMS横浜醫院のPMS/PMDD治療

 PMSの治療として当院では低用量ピル、抗うつ薬、漢方薬、鍼灸、生活指導、カウンセリングを行っています。PMSの治療はライフスタイル、ライフステージに合わせて一人一人によってオーダーメイドしていくことが可能です。どのように治療をしていきたいか一緒に相談しながら決めていきましょう。