【医師監修】インポスター症候群とは?「私なんて…」と感じる原因・特徴と対処法

この記事で分かること

  • インポスター症候群とは何か
  • インポスター症候群の特徴
  • 「私なんて」と自分を過小評価する原因
  • 仕事にどのような影響があるのか
  • 自分でできる対処法
  • 病院を受診する目安
  • 当院で行っている支援


インポスター症候群とは?

インポスター症候群とは、周囲から評価されるだけの能力や実績があるにもかかわらず、自分の成功や成果を認められず、「自分には本当は能力がない」「今の評価はたまたま」「いつか実力がないことがばれてしまう」と感じてしまう心理的な傾向です。

インポスター症候群は、1978年に心理学者のClanceとImesによって提唱された概念です。

「インポスター(impostor)」には「詐欺師」「偽物」という意味があり、自分は周囲が思っているような優秀な人間ではなく、「周囲をだましているような感覚」を持つことから、この名前がつけられています。


こんなことはありませんか? 

  • 仕事で評価されても「たまたま」だと思ってしまう
  • 褒められても素直に喜べない
  • 「自分は仕事ができない」と感じる
  • 周囲の人が自分より優秀に見える
  • 仕事を任されると「期待に応えなければ」と強くプレッシャーを感じる
  • 昇進や異動をきっかけに、自信がなくなった
  • 頑張っているのに「まだ足りない」と感じる
  • 失敗するのが怖く、必要以上に準備してしまう

このような状態が続いている場合、自分の成果を適切に評価できなくなっている可能性があります。


インポスター症候群チェックリスト

以下の項目に当てはまるものはありますか?

0/7 当てはまる項目にチェックしてください

なぜ「私なんて」と思ってしまうのでしょうか?

①完璧主義

「失敗してはいけない」「完璧にできなければ意味がない」と考えやすい人は、実際には十分な成果を出していても、自分に厳しい評価をつけてしまいます。

②失敗を自分の能力不足と結びつける

「今回はうまくいかなかった」という出来事を、「自分には能力がない」と捉えてしまうことがあります。

③成功を自分の能力として認められない

仕事がうまくいっても、「周りが助けてくれた」「簡単な仕事だった」「運がよかった」と考え、自分の能力や努力を評価できないことがあります。

④周囲と比較してしまう

他人の「できている部分」と自分の「できていない部分」を比較すると、自分だけが劣っているように感じやすくなります。

⑤環境の変化

昇進、異動、転職、管理職への就任など、これまでと求められる役割が変わったときに、「自分に務まるのだろうか」と感じることがあります。

インポスター症候群では、「失敗したらどうしよう」「期待に応えなければならない」という気持ちから、必要以上に準備をしたり、頑張りすぎたりすることがあります。

そして、実際に仕事がうまくいったとしても、「自分の能力があったから成功した」とは考えられず、「一生懸命頑張ったから」「周りの人が助けてくれたから」「たまたま運がよかったから」と捉えてしまうことがあります。

そのため、成功した経験があっても「自分には能力がある」という自信につながりにくく、「次は失敗するかもしれない」「今度こそ実力がないことがばれてしまうかもしれない」という不安が残ります。

すると、その不安を打ち消すために、また必要以上に頑張ったり、完璧に準備したりするようになります。

このように、頑張る→成功する→成功を自分の能力として認められない→「次は失敗するかもしれない」と不安になる→さらに頑張るという循環が生じることがあります。

この状態が続くと、周囲からは「仕事ができる人」と評価されていても、本人は自分の能力を実感できず、努力を続けても「まだ足りない」と感じてしまうことがあります。


インポスター症候群の特徴

インポスター症候群は病気として診断されるものではないため、医学的に決められた「症状」があるわけではありません。
ただし、インポスター傾向がある人には、次のような心理・行動がみられることがあります。

心理面

  • 自分に自信が持てない
  • 自分の成果を認められない
  • 強い不安を感じる
  • 自分を過小評価する
  • 失敗を過度に恐れる

仕事・行動面

  • 過剰に準備する
  • 完璧を求める
  • 仕事を抱え込む
  • 人に頼れない
  • 仕事を先延ばししてしまう
  • 評価されること自体がプレッシャーになる

生活への影響

  • 仕事のことが頭から離れない
  • 疲れていても休めない
  • 睡眠に影響する
  • 出勤することがつらくなる

「自信がないだけ」と思っていたものが、仕事や生活に影響している場合は、単なる性格の問題として片付けないことが大切です。 


インポスター症候群はどのように診断されますか?

インポスター症候群そのものは正式な精神疾患の診断名ではないため、医療機関で「インポスター症候群」と診断されるとは限りません。

医療機関では、まず現在どのようなことで困っているのか、いつからその状態になったのか、仕事や生活にどの程度影響しているのかなどを確認します。

また、強い不安や抑うつ、睡眠障害などがある場合には、うつ病や不安症など、ほかの心身の不調がないかについても確認します。


インポスター症候群はどうすれば克服できますか?

①成果を事実として書き出す

「自分は何もできていない」と感じたときは、実際に達成したことや周囲から評価されたことを書き出してみましょう。

②成功を「自分の能力」として捉えてみる

「運がよかった」「周りのおかげ」だけではなく、自分がどのような行動をしたから結果につながったのかを振り返ります。

③完璧を目標にしない

「100点でなければ失敗」ではなく、「必要な水準を満たせたか」という視点を持ちます。

④他人との比較を減らす

他人の結果と自分の途中経過を比較していないか、一度立ち止まって考えてみましょう。

⑤一人で抱え込まない

信頼できる人に相談することで、自分では気づかなかった「できていること」に気づける場合があります。


当院ではインポスター症候群にどのような支援を行っていますか?

当院では、「自分には能力がない」と感じてしまう背景にある考え方や、不安、仕事上のストレスなどを整理することを大切にしています。

①現在の悩みを整理

仕事で何が負担になっているのか、どのような場面で「自分なんて」と感じるのかを整理します。

②考え方のクセを整理

「失敗=能力がない」「人に頼る=能力がない」など、自分を苦しめている考え方を一緒に整理します。

③自分の成果を客観的に振り返る

「できなかったこと」だけではなく、「できたこと」「努力したこと」「周囲から評価されていること」に目を向けます。

④必要に応じて治療・支援

不安や抑うつ、睡眠の問題などが強い場合には、その状態に応じた治療や支援を検討します。


支援によってどのような変化を目指しますか?

「自分はダメ」という思いに振り回されず、自分の力を適切に評価できる状態を目指します

BeforeAfter
成功しても「たまたま」と考える自分の努力や能力も認められる
失敗=自分には能力がない失敗と能力を切り離して考えられる
完璧でないと不安「十分できた」と考えられる
何でも自分で抱える必要なときに人に相談できる
常に周囲と比較する自分自身の変化に目を向けられる
仕事への不安が頭から離れない仕事とプライベートを切り替えられる

目指すのは、「自信満々になること」ではありません。自分の能力や成果を過小評価しすぎず、必要以上に自分を責めずに仕事に取り組める状態です。


このようなお悩みをお持ちの方はご相談ください

  • 「自分は仕事ができない」という考えが頭から離れない
  • 仕事に行くことがつらくなってきた
  • 仕事の不安で眠れない
  • 疲れていても休めない
  • 仕事を抱え込みすぎている
  • ミスへの恐怖で仕事に時間がかかる
  • 強い不安や落ち込みが続いている
  • 以前できていた仕事ができなくなってきた
  • 仕事を続けることに限界を感じている

また、「インポスター症候群かどうか分からない」「こんなことで病院に行っていいの?」という段階でも、お気軽にご相談ください。


「自信がない」?インポスター症候群?それとも心身の不調?

一時的な自信の低下インポスター傾向心身の不調
主な特徴仕事や出来事をきっかけに、一時的に自信をなくす成果や評価があっても「自分には能力がない」と感じやすい強い不安や落ち込み、睡眠・食欲の変化などがみられることがある
成功したとき「今回はうまくいった」と受け止められる「運がよかった」「周りのおかげ」と考えやすい成功しても喜べない、何をしても自信が持てないことがある
失敗したとき「次は気をつけよう」と切り替えられる「やっぱり自分はダメだ」と考えやすい強い自己否定や不安につながることがある
仕事への影響大きな支障はないことが多い必要以上に頑張る、完璧を求める、抱え込むことがある集中力・意欲の低下、出勤困難などにつながることがある
相談について必ずしも必要ではない今後の働き方や考え方を整理したい段階でも相談できるつらさや生活への影響がある場合は医療機関への相談を検討

インポスター傾向があるからといって、必ずしも病気というわけではありません。また、仕事や生活に大きな支障が出ていなくても、「自分の成果を認められない」「必要以上に頑張ってしまう」「もっと楽に仕事と向き合いたい」と感じている場合は、相談することができます。

当院では、症状の治療だけでなく、自分の考え方のクセや仕事との向き合い方を整理し、今後どのように働いていきたいのかを一緒に考えることも大切にしています。


インポスター症候群について、よくある質問

Q.インポスター症候群とは何ですか?

周囲から評価されるだけの能力や実績があっても、自分の成功を認められず、「自分には本当は能力がない」と感じてしまう心理的な傾向です。 

Q.インポスター症候群は病気ですか?

インポスター症候群は、うつ病や不安障害などのような正式な精神疾患の診断名ではありません。 

Q.インポスター症候群になりやすい人は?

完璧主義で自分に厳しい人や、失敗や周囲からの評価を気にしやすい人などにみられることがあります。 

Q.「仕事ができない」と感じるのはインポスター症候群ですか?

「仕事ができない」と感じるだけでは判断できません。
実際には成果を出していても、それを自分の能力として認められないことが特徴の一つです。 

Q.インポスター症候群はどうすれば克服できますか?

自分の成果を事実として振り返り、完璧を求めすぎないことが一つの方法です。
必要に応じて、専門家と考え方や仕事との向き合い方を整理することもできます。 

Q.インポスター症候群は何科を受診すればいいですか?

強い不安や落ち込み、睡眠の問題などがある場合は、心療内科や精神科への相談を検討しましょう。 

Q.インポスター症候群で病院に行ってもいいですか?

はい。
「自分は仕事ができない」「失敗するのが怖い」と感じるものの、まだ大きな支障がない段階でも相談できます。

Q.カウンセリングで改善できますか?

カウンセリングでは、自己評価の厳しさや完璧主義、仕事上の不安などを整理し、より無理のない考え方や働き方を一緒に考えることができます。 


エビデンス・参考文献 

「どうせ私なんて‥‥‥」がなくなる「謙遜さん」の本
当院の医師と保健師が共著で執筆しました。

  • 藤江里衣子.状態的インポスター現象の検討―尺度作成およびパーソナリティとの関連―日本パーソナリティ心理学会発表論文集.2007. 

この記事のポイント

  • インポスター症候群は、実績や能力があっても自分の成功を認められない心理的な傾向です。
  • 「自分は仕事ができない」「いつか実力がばれる」と感じることがあります。
  • 完璧主義や失敗への恐怖、周囲との比較などが関係することがあります。
  • インポスター症候群そのものは、正式な精神疾患の診断名ではありません。
  • 「自信がない」「頑張りすぎてしまう」という段階でも、自分の考え方や仕事との向き合い方を整理するために相談できます。
  • 強い不安や落ち込み、睡眠の問題などがある場合は、心身の不調が隠れていないか医療機関で相談することも大切です。

まとめ

「私なんて」「自分は仕事ができない」と感じることは、誰にでも起こり得ることです。その背景には、完璧主義や失敗への不安、周囲との比較など、さまざまな要因があります。

周囲から評価されていても、自分の成果を認められず、不安やプレッシャーを抱えてしまう状態は、インポスター症候群と関連している可能性があります。

まずは、できていないことだけでなく、実際にできていることや積み重ねてきた努力にも目を向けてみましょう。

仕事がつらい、眠れない、強い不安や落ち込みがある場合は、医療機関への相談も選択肢の一つです。

また、「仕事に自信がない」「失敗するのが怖い」「頑張りすぎてしまう」と感じていても、仕事や生活に大きな支障がない段階から相談できます。

「こんなことで相談していいのかな」と思う段階でも構いません。まずは、今感じていることや仕事で困っていることを整理するところから始めてみましょう。

監修

田中 遥/ 医療法人社団ベスリ会 ベスリ会理事長

専門:心療内科/睡眠障害内科

プロフィールを見る →
実績
17,000人超
働くビジネスパーソンの心の診療実績
5,000症例以上
TMS治療(薬に頼らないうつ治療)の実績
20冊弱
医師による著書・監修書籍(睡眠・脳科学・発達障害ほか)
20件以上
テレビ・新聞・Web・専門誌などへの出演・掲載・講演

|