【医師解説】
燃え尽き症候群専門外来
~燃え尽き症候群、バーンアウトってなに?~

薬に頼らないバーンアウト治療

燃え尽き症候群は①責任を背負いすぎたり、頑張りすぎたりする性質、②バーンアウトしやすい環境(理不尽な上司・解決できない悩み事)③がむしゃらに頑張ることが主軸になる適応方法の3つが重なるため起こります。

心の不調だけでなく、肩こりや頭痛になったりと交感神経優位になることで身体の症状もでます。


燃え尽き症候群の人はいっぱいいっぱいになっているため、自分の「心の不調」に気づくよりも「身体の不調」に気づくことや、自分よりも周りのほうが早く「不調」に気づくこともあります。

燃え尽き症候群~バーンアウト~とは

燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、誰かのためになることをしたい、と一生懸命頑張るうちにいつのまにか自分自身を消耗してしまう状態をいいます。

燃え尽き症候群は、「目標」へ向かって、「誰かのために」頑張ることが生きがいの人がなりやすいです。

消耗が続くとだんだんと「人と関わるのが苦痛になり、頑張っても頑張っても自分が虚しく感じる」状態になり、そんな自分に嫌気がさして、自分自身を責めたり、焦燥感が強くなったり、うつ状態になって落ち込んだり、不安になったりと消耗のループに入ります

燃え尽き症候群セルフチェックリスト

燃え尽き症候群になりやすい職種

  • 企業の中間管理職
  • 国家総合職・官公庁などの公務員
  • 教員・警察官などの公務員
  • 医師・看護師・心理士などの医療職
  • 介護職・福祉職
  • 会計士・弁護士
  • 子育てや介護などをしている方

燃え尽き症候群セルフチェック

燃え尽き症候群の原因背景には、「共依存」が関わっている可能性もあります。誰かのために頑張ることが、自分の人生の充実になる…、など充実感を感じて日々やりがいを感じながら過ごせているときは良いですが、

  • 問題が起こると自分の責任に感じ、力不足に落胆してしまう
  • なにか言われると責められている感じがする
  • 休んでいるとやっていないことを不安を感じて休めない
  • 笑顔をつくるのが億劫になってきた
  • 疲れ切って休んでも意欲が戻らない
  • いつまでも成し遂げられない感じがして、自分が劣っているように感じる
  • 以前のようにだれかを思いやり、心を配ることが難しくなっている

このように精神的なストレスによるホルモンや自律神経、免疫の乱れで心身の過敏性が現れることもあります。

自分を犠牲にして嫌な感情や疲労を感じていながら頑張り続ける、周囲の期待に一生懸命応えないとダメな自分のように感じてしまうような状態は「自分自身」が悲鳴をあげてしまいます。

燃え尽き症候群専門外来

燃え尽き症候群専門外来では、うつ状態に対しただ抗うつ薬の処方などではなく、なぜ燃え尽き症候群になったかの原因に対してフェーズに合わせてアプローチをしております。

燃え尽き症候群になってしまいやすい背景の気質に対するカウンセリングや過去を整理し、原因に対する治療など今後燃え尽き症候群になることを予防する治療を行っています。

治療のフェーズは、【急性期】から【心身・社会回復期】を経て【人間成長期】があります。

当院では燃え尽き症候群の治療は、フェーズに合わせて再発予防策を作り再発しないように社会復帰できることをめざしています


燃え尽き症候群の急性期治療

燃え尽き症候群の急性期では、

  • 頭がいっぱいいっぱいで一つのことを考えようとしても違うことを考えてしまう
  • 文章を読んでも頭にはいってこないため、何度も読み直さないといけない
  • 頭にモヤがかかったような状態で生産性がでない
  • いつも仕事のことを考えていなければならず焦っていつのまにか呼吸が浅くなる
  • 自分では不調に思わないが、周りの人から休んだほうがいいと言われる

などの症状が当てはまる可能性が高いです。

1)抗うつ薬・睡眠薬・抗不安薬

抗うつ薬や睡眠薬、抗不安薬などは落ち込みや不安、焦燥感、食欲が低下したり、寝付きに時間がかかったり、途中で起きてしまう際には役立つ治療です。
□忙しすぎて通院頻度が少なくなければ治療できない
□大きく自分の生活を変えないまままず治療を開始してみたい
□通院をするのも心身がしんどい
このような方は投薬治療が役立ちます。

2)TMS治療

頭にモヤがかかる【ブレインフォグ】と呼ばれる状態や、夕方になると頭がぼーっとして脳疲労を強く感じるなどの場合は、脳のネットワークが関わっている可能性があります。

TMS治療は2019年に保険診療化された治療であり、お薬よりも効果があり、副作用が少ない治療です。お薬の治療と並行して治療をしたり、仕事に影響があるからと抗うつ薬が怖いという方も受けることができます。

□頭にモヤがかかったような感じで集中力低下が気になる
□短期間で集中的に治療がしたい
□できるだけ仕事に影響が出ずに治療がしたい
□副作用ができるだけ少ない治療がうけたい

お薬の治療では生物学的な下位の脳ネットワークが関わる食欲や気持ちの面などは改善するものの、【ブレインフォグ】や集中力の低下などの上位の脳ネットワークまでの改善がなかなか難しいことが最近明らかになっています。

3)メンタル鍼灸

ベスリクリニックのメンタル鍼灸は一般的な鍼灸治療のように体の痛みや硬さを対象としたものではなく、肉体と精神を支える力(生命力、精気)に直接働きかける【補気の鍼灸治療】です。

□つねに身体が緊張している状態で肩が上がったり、腰に痛みを感じる状態である
□最初は1週間か2週間に1度くらいの治療頻度を希望している
□自分から多くを語るエネルギーが残っていない状態

燃え尽き症候群で身体の緊張が強く、何かを考えたり、生活改善したりする気力さえも出ないときにはまず鍼灸の治療から開始することもおすすめです


燃え尽き症候群の心身・社会回復期治療

4)生活カウンセリング

自分の状態をある程度客観視できるようになり、睡眠リズム、生活リズムを整える事により減薬しやすい心身づくりをします。

休職のときや、自分の心身を整えるための方法を改めて習慣化したいという方には、「セロトニン・トレーニング」をおすすめしています。

□休職をして休み方がわからない
□落ち込みが強くなったり、不安になりづらくなる生活習慣がしりたい
□抗うつ薬や睡眠薬を無理なく減薬できるように準備がしたい
□不調になったときに寝付きが悪くなったり、朝早く起きてしまうなどの症状から始まった

「ただ寝てゆっくり休み、復職したい気持ちが出てくるまで待つ」休職の過ごし方は休職が長期化しやすいです。休職は長くなればなるほど復職しづらくなります。もちろん、ゆっくり休むことも必要なフェーズはありますが、目標や見通しがないとゆっくり休めないということもあります。当院では、休職中に「復職できる心身づくり」をするためセロトニン・トレーニングを行っています。

また、寝付きが悪い、途中で起きてしまう、朝スッキリ起きれない、日中の眠気が強くぼんやりしてしまう方には睡眠トレーニングを行っています。急性期に睡眠薬が処方された方は、自分の睡眠の力をあげ睡眠薬が減薬しやすい身体づくりを行い減薬準備に入ります。

5)燃え尽き症候群カウンセリング

燃え尽き症候群になってしまいやすい背景の気質に対するカウンセリングや燃え尽き症候群になった原因に対して過去を整理し、これからどのようにその経験を生かしていくかを考えることができます。

□何がストレスか頭が整理できず、自分でよくわからなくなってしまった
□過去の失敗や嫌な記憶が強く、ぐるぐる思考がとまらない
□誰かが困っていると自分ができないか真っ先に考える
□周囲の期待に答えようと無意識に頑張ってしまう
□困っている人の役に立ちたいと思っている
□つらい状況でも、弱音を吐かずに耐えるのが社会人だと思っている


燃え尽き症候群の人間性長期治療

6)ビジネストレーニング

仕事で燃え尽きてしまいやすい人は、仕事での成果の出し方や人間関係の作り方に対する再発予防のビジネストレーニングを受けることができます。

□職場の人間関係がうまく行かずに燃え尽きてしまった
□仕事の量が多すぎたが、ヘルプがうまく出せず上司がなかなか助けてくれなかった
□部下のマネージメントに苦労して自分が仕事を引き受けてしまった
□借りを作るような感じがして、ひとにものを頼むのが苦手だ
□頼まれて、頼りにされているのに断るのは悪いことだ
□いつも前向きで明るくしていないと、周りの人に嫌な感じを与えてしまうように思う

仕事上の人間関係や、仕事の責任の重さなどの仕事上のストレスの積み重なりによる燃え尽き症候群に対してカウンセリングを行っております。


燃え尽き症候群になる3要素

「誰かのために頑張る人」がすべて燃え尽き症候群になるわけではありません。

燃え尽き症候群(バーンアウト)は人や環境の関係性の中で起こリます。

医学的な病名でいうと「適応障害」に当たることが多いです。

参照:眠る投資~ハーバードが教える最高の睡眠法~

ベスリクリニックは働く人の薬に頼らない治療経験をまとめ、「ベスリ理論」として理論化し、「適応障害」を原因別にさらに3つに分けて紹介しています。

□個人の特性(睡眠・食事・運動の生活習慣・病気・心身状態)
□環境(理不尽な上司や部下・自分でマネージメントできない量の仕事と高い質が求められる・解決できない家庭の問題)
□適応能力(コミュニケーションや受け取り方)

燃え尽き症候群は適応障害の中でも「過剰適応障害」に当たると考えています。

燃え尽き症候群を起こす要素は「ベスリの病態論」の中でも以下のような状態が続くときに起こります。

  1. 個人の特性:使命感や責任感、思い入れが強い
  2. 環境:手を抜けない大変な状況が続く
  3. 適応能力:いくら頑張っても報われない

どこかから始まり、最終的にはすべてが揃うことが多いですが、最初にどこからはじまったのかを明らかにして、再発予防策まで作ることがうつ病とは異なる燃え尽き症候群の治療のポイントとなります。

参考書籍(本)