男性更年期の見分け方|中年危機との違いを医師が解説

「最近、疲れが抜けない」

「以前より仕事に集中できなくなった」

「なんとなくやる気が出ない」

「このまま今の仕事を続けていいのか、不安になる」

「家族や仕事に対してイライラすることが増えた」

40代、50代頃になると、このような変化を感じる男性が増えてきます。
しかし、こうした不調があると、

「年齢のせいかな」

「仕事のストレスが溜まっているだけかも」

「人生について考える時期だから仕方ない」

と、そのままにしてしまうことも少なくありません。
実は、こうした症状の背景には、**男性更年期(LOH症候群)**が関係している場合があります。
一方で、40~50代頃に人生や仕事、家庭について悩み、「このままでいいのだろうか」と感じる**中年危機(ミッドライフクライシス)**が関係していることもあります。
さらに、男性更年期と中年危機が重なっているケースもあります。


この記事で分かること

この記事では、以下について解説します。

  • 男性更年期(LOH症候群)とは何か
  • 中年危機(ミッドライフクライシス)とは何か
  • 男性更年期と中年危機にはどのような違いがあるのか
  • 自分ではどのように見分ければよいのか
  • 男性更年期ではどのような検査・治療を行うのか
  • 中年危機の場合にはどのような対処が考えられるのか
  • 男性更年期と中年危機が重なっている場合はどうすればよいのか

男性更年期と中年危機、どう違うのでしょうか?

結論からいうと、男性更年期(LOH症候群)は、テストステロン低下とそれに伴う症状を医学的に評価する状態であるのに対し、中年危機は、人生・仕事・家庭・将来などについての心理的な揺らぎを指します。

男性更年期では、疲労感、意欲低下、気分の落ち込み、集中力低下、性欲低下など、身体・精神・性機能に関わるさまざまな症状が現れることがあります。

一方、中年危機では、「このままの人生でよいのか」「仕事を変えるべきか」「これから何をしたいのか」といった人生や価値観に関する悩みが中心になることがあります。

ただし、実際には両者を完全に分けられるとは限りません。

仕事のストレスや睡眠不足などがホルモンや心身の状態に影響し、男性更年期の症状と人生の悩みが同時に現れることもあります。

そのため、「身体の問題なのか、心の問題なのか」と最初から決めつけず、両方の視点から状態を整理することが大切です。


こんな方は男性更年期と中年危機の違いを知っておきましょう

例えば、こんな変化はありませんか?

  • 以前より疲れやすくなった
  • 休んでも疲労感が残る
  • 仕事への意欲が湧かない
  • 集中力が続かなくなった
  • イライラすることが増えた
  • 性欲が以前より低下した
  • 「このままでいいのか」と考えることが増えた
  • 今後のキャリアについて迷っている
  • 家族や仕事に対する価値観が変わってきた
  • 将来に漠然とした不安を感じる

「いくつ当てはまるか」だけで男性更年期や中年危機を判断することはできません。

ただ、こうした変化が続いているのであれば、一度ご自身の状態を整理してみることをおすすめします。


あなたはどちら?簡単チェック

気になる項目にチェックを入れてください。

※これは簡易的な目安であり、診断ではありません。実際には両方が重なっていることもあります。


なぜ男性更年期が起こるのでしょうか?

男性更年期(LOH症候群)は、男性ホルモンであるテストステロンの低下と、それに伴う症状が関係しています。

テストステロンは、性機能だけではなく、筋力、体組成、意欲、精神状態など、男性の心身のさまざまな機能に関係しています。

テストステロンは加齢に伴って低下することがありますが、年齢だけが原因とは限りません。

例えば、

  • 慢性的なストレス
  • 睡眠不足
  • 過労
  • 運動不足
  • 生活習慣の乱れ
  • 肥満や代謝異常

なども、テストステロンや心身の状態に影響する可能性があります。

そのため、

「40代だから男性更年期」

「50代だから仕方がない」

という単純なものではありません。


中年危機(ミッドライフクライシス)とは何でしょうか?

中年危機(ミッドライフクライシス)とは、40~50代頃など人生の中間地点で、これまでの生き方や仕事、家庭、将来について見つめ直し、不安や迷いを感じる状態を指す言葉です。

例えば、

「今の仕事をこのまま続けていいのだろうか」

「これまで頑張ってきたけれど、何のためだったのだろう」

「子育てが一段落して、何を目標にすればいいのか分からない」

「もっと違う人生があったのではないか」

といった気持ちが出てくることがあります。

これは必ずしも「病気」という意味ではありません。

人生の節目で自分の価値観や生き方を見直すことは、誰にでも起こり得る自然な心理的変化です。

ただし、不安や落ち込みが強く、仕事や家庭生活に大きな支障が出ている場合には、カウンセリングなどの支援が役立つことがあります。


男性更年期と中年危機はどのように見分ければよいのでしょうか?

大まかには、次のような違いがあります。

男性更年期(LOH症候群)中年危機
主な背景テストステロン低下など身体的要因人生・仕事・家庭などの心理・環境要因
主な症状疲労、意欲低下、性欲低下、集中力低下など将来への不安、人生への迷い、価値観の変化など
身体症状現れることがある必ずしも中心ではない
性機能の変化現れることがある必ずしも中心ではない
評価方法問診・血液検査など問診・心理的な評価など
主な対応生活習慣改善、必要に応じた治療カウンセリング、価値観・キャリアの整理など
両方が重なることありあり

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。

例えば、

「仕事がうまくいかず悩んでいる」

という心理的ストレスが続くことで、睡眠不足や疲労、意欲低下が生じ、さらに心身の状態が悪化することもあります。

反対に、男性更年期による疲労や意欲低下が原因で仕事が思うように進まず、「自分の人生はこのままでいいのか」と悩むようになることもあります。

原因と結果が一方向ではなく、相互に影響している場合もあるのです。


男性更年期の症状にはどのようなものがありますか?

男性更年期では、身体・精神・性機能など、さまざまな症状が現れることがあります。

身体的な症状

  • 疲れやすい
  • 筋力が低下した
  • 体脂肪が増えた
  • 発汗・ほてり
  • 動悸
  • 睡眠の質が低下した

精神的な症状

  • やる気が出ない
  • 気分が落ち込む
  • イライラする
  • 不安を感じる
  • 集中力が低下する
  • 記憶力が低下したように感じる

性機能に関する症状

  • 性欲が低下した
  • 朝立ちが減った
  • 勃起力が低下した

特に、「疲労」「意欲低下」「性欲低下」などが複数重なっている場合には、男性更年期の可能性も含めて評価することが大切です。


男性更年期はどのように診断するのでしょうか?

男性更年期は、症状だけで診断するものではありません。

問診で現在の症状や生活状況、ストレスなどを確認したうえで、血液検査によってテストステロンなどを測定します。必要に応じて心理面の評価も行います。

当院では、

① 問診

② 血液検査・心理検査

③ 検査結果と症状を総合的に評価

④ 治療方針を決定

という流れで診療を行っています。

採血については、テストステロンの日内変動を考慮し、当院では午前11時までの来院を推奨しています。


中年危機の場合はどのように対応するのでしょうか?

中年危機の場合には、「症状をなくす」というよりも、今の自分が何に悩んでいるのかを整理することが重要です。

例えば、

「仕事を辞めたいのか、それとも今の働き方を変えたいのか」

「本当にやりたいことは何なのか」

「家族との関係で何に悩んでいるのか」

「これからどのような人生を送りたいのか」

といったテーマを整理していきます。

一人で考えていると、悩みが頭の中で堂々巡りしてしまうことがあります。

カウンセリングでは、こうした漠然とした不安や迷いを言葉にしながら、自分の価値観や今後の方向性を整理していきます。


男性更年期にはどのような治療がありますか?

男性更年期の治療では、症状や検査結果、背景に応じて治療方法を検討します。

生活習慣の改善

睡眠、運動、食事、体重管理など、生活習慣を整えることは、心身の状態を改善するうえで重要です。

カウンセリング

ストレスや仕事上の負担、家庭環境などが症状に影響している場合には、カウンセリングによって背景を整理します。

漢方薬

症状や体質に応じて、漢方薬を使用する場合があります。

テストステロン補充療法

検査結果や症状などを踏まえて適応がある場合には、テストステロン補充療法(TRT)を検討します。

テストステロン補充療法は、すべての男性に適しているわけではありません。治療前に禁忌や注意事項を確認し、治療中も定期的に状態を確認することが重要です。


当院では男性更年期と中年危機の両方から状態を確認します

当院では、男性更年期を「ホルモンだけの問題」として捉えるのではなく、身体面と心理面の両方から状態を確認することを大切にしています。

男性更年期外来では、

  • 現在の症状
  • 生活状況
  • 睡眠
  • ストレス
  • 仕事や家庭環境
  • テストステロンなどの血液検査
  • 必要に応じた心理検査

などを総合的に確認します。

そのうえで、

カウンセリング・漢方薬・テストステロン補充療法

などから、一人ひとりの状態に合わせて治療方針を検討します。

テストステロン補充療法では、当院でサスタノンやセルノスデポを使用しています。現在の案内では、サスタノンは2~4週ごと、セルノスデポは10~14週ごとの治療となっています。

一方で、「ホルモンの問題なのか、仕事や人生についての悩みなのか分からない」という場合には、カウンセリングによって現在抱えている問題を整理していくこともできます。

「どちらなのか分からない」という状態でもご相談いただけます。


治療によってどのような変化を目指すのでしょうか?

治療の目的は、単純に「テストステロンの数値を上げること」だけではありません。

現在困っている症状を整理し、日常生活や仕事、家庭で過ごしやすくなることを目指します。

現在のお悩み目指す状態
朝から疲れている疲労感が軽くなり、活動しやすくなる
仕事に集中できない集中して仕事に取り組みやすくなる
何をするにも面倒に感じる少しずつ行動する意欲が戻る
イライラすることが増えた感情をコントロールしやすくなる
性欲や性機能の変化が気になる性機能についても含めて相談できる
将来に漠然とした不安がある自分が何に悩んでいるのか整理できる
「このままでいいのか」と悩み続ける自分の価値観や今後の方向性を考えられる

症状や原因によって改善の仕方は異なりますが、身体面だけでなく心理面も含めて、その人らしい生活を取り戻していくことを目指します。


このような方は男性更年期の相談に向いています

特に、以下のような方は一度ご相談ください。

  • 40代以降で以前より疲れやすくなった
  • 休んでも疲れが取れない
  • 以前よりやる気が出なくなった
  • 集中力が落ちた
  • イライラや不安が増えた
  • 性欲や勃起力の変化が気になる
  • 睡眠の質が悪くなった
  • 筋力が落ちたように感じる
  • 仕事のパフォーマンスが以前より落ちている
  • 「このままでいいのか」と人生について考えることが増えた
  • キャリアや仕事について迷っている
  • 男性更年期なのか中年危機なのか自分では判断できない

「男性更年期かもしれない」と確信していなくても問題ありません。

「最近なんとなく調子が悪い」という段階から相談することができます。


男性更年期・中年危機・うつ病はどう違うのでしょうか?

男性更年期や中年危機では、うつ病と似た症状が現れることがあります。

男性更年期中年危機うつ病
主な背景テストステロン低下など人生・仕事・環境の変化心理・身体・社会的要因などが複合
疲労感ありストレスに伴い生じることがあるよくみられる
意欲低下あり生じることがある代表的な症状
性欲低下比較的特徴的必ずしも中心ではない生じることがある
将来への不安生じることがある比較的中心的生じることがある
検査テストステロンなど問診・心理評価問診・心理評価など
対応状態に応じてホルモン治療などカウンセリングなど状態に応じた精神科・心療内科治療

ただし、これらは完全に別々のものではありません。

男性更年期と心理的ストレスが同時に存在することもありますし、男性更年期による不調をきっかけに抑うつ状態になることもあります。

そのため、自己判断だけで「更年期だから」「心の問題だから」と決めつけないことが大切です。


よくある質問(FAQ)

Q. 男性更年期と中年危機は自分で見分けられますか?

ある程度の目安をつけることはできますが、自己判断だけで明確に区別することは難しい場合があります。
男性更年期ではテストステロンなどの血液検査を行い、症状と検査結果を総合的に評価します。
中年危機では、仕事・家庭・人生・価値観などの心理的な背景を整理することが重要です。

Q. 男性更年期は40代から始まりますか?

40代以降に多くみられますが、年齢だけで決まるものではありません。
ストレス、睡眠不足、過労、生活習慣などが関係することもあるため、若い年代でも気になる症状があれば相談することができます。

Q. テストステロンが低ければ男性更年期ですか?

テストステロン値が低いだけで、必ず男性更年期と診断されるわけではありません。
症状や診察所見、血液検査などを組み合わせて総合的に判断します。
日本のLOH診療でも、症状とホルモン値を組み合わせた評価が重視されています。

Q. 男性更年期と中年危機は同時に起こることがありますか?

はい、あります。
例えば、男性更年期による疲労や意欲低下によって仕事がうまくいかなくなり、それをきっかけに将来への不安や人生への迷いが強くなることがあります。
反対に、強いストレスや生活環境の変化が心身の状態に影響し、男性更年期の症状と重なっているように感じる場合もあります。

Q. 性欲が低下しただけでも男性更年期の可能性がありますか?

性欲低下は男性更年期でみられる症状の一つです。
ただし、性欲低下にはストレス、睡眠不足、薬剤、心理的要因など、さまざまな原因があります。
気になる場合には、テストステロンなどの検査を含めて原因を確認することができます。

Q. 男性更年期の治療では必ずホルモン注射をするのでしょうか?

いいえ。
男性更年期の治療は、すべての方にテストステロン補充療法を行うわけではありません。
症状、検査結果、既往歴、生活背景などを確認したうえで、生活習慣改善、カウンセリング、漢方薬、ホルモン治療などから適した方法を検討します。

Q. 「男性更年期なのか、ただのストレスなのか分からない」という状態でも受診できますか?

はい。
むしろ、原因がはっきりしない段階で状態を確認することも受診の目的の一つです。
身体面と心理面の両方から状態を整理することで、現在の不調の背景を考える手がかりになります。

Q. 中年危機の場合、どのような相談ができますか?

仕事やキャリア、家庭、人間関係、将来への不安などについて相談できます。
「仕事を辞めたいのか」「今の働き方を変えたいのか」「本当にやりたいことは何なのか」など、頭の中で整理できていない悩みを言葉にしながら、今後の方向性を考えていきます。


エビデンス・参考文献

男性更年期(LOH症候群)は、症状とテストステロン低下を組み合わせて評価することが基本となります。日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会による「LOH症候群診療の手引き」では、症状の評価とホルモン測定を含めた診断アルゴリズムが示されています。

また、日本泌尿器科学会による2023年のLOH診療手引きの概要では、LOHを加齢に伴うテストステロン低下とそれに関連する症状を伴う状態として整理し、症状や所見を踏まえて治療適応を判断することが示されています。

海外のガイドラインでも、男性性腺機能低下症の診断には、症状・徴候と低テストステロンを組み合わせた評価が重要とされています。

参考文献

  1. 日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会.LOH症候群診療の手引き.
  2. Ide H, et al. Summary of the clinical practice manual for late-onset hypogonadism. Int J Urol. 2023.
  3. Fode M, et al. Late-onset Hypogonadism and Testosterone Therapy. Eur Urol Focus. 2019.
  4. Wu FCW, et al. EMAS position statement: Testosterone replacement therapy in the aging male. 2015.
  5. European Academy of Andrology. Guidelines on investigation, treatment and monitoring of functional hypogonadism in males. Andrology. 2020.

この記事のポイント

  • 男性更年期(LOH症候群)は、テストステロン低下とそれに伴う症状を医学的に評価する状態です。
  • 男性更年期では、疲労感、意欲低下、集中力低下、気分の落ち込み、性欲低下などが現れることがあります。
  • 中年危機は、人生・仕事・家庭・将来などについての心理的な迷いや不安を指します。
  • 男性更年期と中年危機は、症状や背景が似ているため、自分だけで見分けることが難しい場合があります。
  • 両者が同時に存在することもあり、「身体の問題」「心理的な問題」のどちらか一方だけと決めつける必要はありません。
  • 男性更年期では、症状の確認に加えてテストステロンなどの血液検査を行い、総合的に評価します。
  • 気になる不調が続いている場合は、「男性更年期なのか分からない」という段階から相談することができます。

「年齢のせい」と諦めなくても大丈夫です

40代、50代になると、

「昔より疲れやすくなった」

「仕事へのやる気が出ない」

「以前のように集中できない」

「これからの人生をどうすればいいのか分からない」

そんな変化を感じることがあります。

そのとき、

「もう年齢だから仕方ない」

と、一人で抱え込んでしまう必要はありません。

身体的な変化が関係しているのか、仕事や人生に対するストレスが関係しているのか、それとも両方が影響しているのか。

一つずつ整理していくことで、今の不調に対してできることが見えてくる場合があります。

当院では、男性更年期についてホルモン・身体面だけでなく、ストレスや心理面も含めて総合的に評価しています。必要に応じて、カウンセリング、漢方薬、テストステロン補充療法などを組み合わせながら治療を検討します。

「自分は男性更年期なのか、それとも中年危機なのか分からない」

「最近なんとなく調子が悪い」

という段階でも構いません。

まずは現在の状態を一緒に整理するところから始めてみませんか。

監修

田中 遥/ 医療法人社団ベスリ会 ベスリ会理事長

専門:心療内科/睡眠障害内科

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